2020年はこの言葉が強く自分の中で感じた1年であった。世界中で流行した新型コロナウィルス感染症の蔓延により今まで当たり前であった我々の暮らしが日々変わり、先行きがわからない未曾有の出来事を経験した。国内経済は衰退の一途を辿り、リーマンショック後を超える戦後最悪のGDP下落幅が拡大し続けたことをはじめ、東京オリンピック開催延期や日本政府により緊急事態宣言が発令され、感染拡大防止によるイベント、スポーツ観戦、各種団体の集会等の自粛や学校の臨時休校などまさに混沌とした時代に突入してしまった。
自粛続きの影響で国民の消費マインドの低下により地域経済が停滞し、先行きが見えない出口に向かっていくことも経験した。しかし、私はこんな混沌とした時代だからこそ見えてくるものや感じるものがあると信じている。
「新日本の再建は我々青年の仕事である。あらためて述べる迄もなく今日の日本の実情は極めて苦難に満ちている。この苦難を打開してゆくため採るべき途は国内経済の充実であり、国際経済との密接なる提携である。その任務の大半を負っている我々青年は、あらゆる機会をとらえて互いに団結し自らの修養に努めなければならぬと信ずる。」
我々は昨年設立70週年を迎え、改めて青年会議所の設立趣意を振り返ると、私たちの創始の精神を改めて痛感することができた。いつの時代も一つの光がある限り、課題解決に向けて逆境や困難に立ち向かい、我々青年経済人が先頭に立ってやるべきことが必ずある。
2021年度は「明るい豊かな社会の実現」を体現できる絶好のチャンスを掴む契機となると考えている。我々の暮らしは新しい生活様式が当たり前になり、人々は危機管理能力が向上していくであろう新時代へと突入する。青年会議所活動様式も柔軟な対応を考えながら、変革を恐れない覚悟を持って少しでもこの街に還元できるよう活動して参ります。
我が国は少子高齢化が進み人口減少に歯止めがかからない状況が続いており、何より全国的に生産年齢人口の減少は顕著に出ている。この函館でも毎年約3,000人が減少し、2030年には函館の人口が約19万人で生産年齢人口が約11万人の推移になると予測されている。函館青年会議所においても、私が入会した2012年度は函館の生産年齢人口が約17万人で会員が約90名在籍していた。2020年の函館の生産年齢人口は約13万人になっており、当時より約4万人も減少し、今年度は50名程度のスタートになってしまった。これからは人口減少時代の現実を知り、時代に即した活動を行っていかなければならないなかで、メンバーが青年会議所運動の意義を知り、活動の楽しさを感じ、JCの輪が広がっていくことで会員拡大につなげたい。
これから3年間は経験豊富なメンバーが順に卒業し、入会歴が浅いメンバーの割合が必然的に多くなり、JAYCEEとしての育成が急務の課題である。そして、2020年度は通常の活動に制限がかかり、学ばなければいけないものができないというもどかしさのもと1年間過ごしてきた。そこで、今後函館青年会議所を背負って立つであろう入会2~3年目を対象とした研修や交流を行う塾を設け、次代を担うJAYCEEとしての成長と同時に青年経済人として成長することがLOMの発展につながり、ひいては函館の発展につながると信じている。
私が函館青年会議所に入会してから最初に感銘を受けたものは組織づくりであった。入会当時の我が社は一企業とは思えないほどの組織で、まるで個人事業主が社内に何名もいるかのようで連携が全く取れていない会社であった。それが、入会以来、青年会議所における各役職での役割や上司部下の関係性を学んだおかげで、今では会社の組織図ができ、効率が良い環境になったと自信をもって言えるようになった。企業にとって継続とは命題であり難題でもある。世界では創業200年を超える長寿企業が約5,600社存在するといわれ、その中でも日本の企業は約3,100社で55%を締めている。存続する根拠は多種多様ではあるが、やはり組織が強く規律ある企業運営を行っていることが要因の一つである。函館青年会議所においても70年の歴史があるのは「変わらないもの・変えてはいけないもの」を継承していきながら、その時代に即したものに可変していった結果、組織が強くなり進化を遂げてきた。昨年度、函館青年会議所は初めて諸会議や例会、総会をWEBで開催することを取り入れた。これもやはりこの時代だからこその変革であり、さらに磨きをかけ効率的かつ生産性が高い組織運営を確立し、各メンバーが自社でも活かしていける盤石な運営基盤をつくることが「継続」の具現化につながると確信している。
函館青年会議所に所属しているメンバーは経営者もしくはそれに準ずる者が大半で、自己の成長や自社の反映に役立てることが目的の一部となっている。地域の発展のために活動することはもちろんではあるが、各企業の発展のために役立てる活動にも着目してみたい。近年、企業が倒産する理由の一つに「情報」とういうキーワードが出てくる。世情を調査せずに常に行きあたりばったりの経営をしていると、競合他社より遅れをとることや社員構成の高齢化による人手不足に陥り若手社員が集まらない企業になる。もちろんそれだけの理由ではないにしろ、情報を得ることや与えることが不足してしまうと経営が行き詰まってしまう。この時代を生き抜くために、函館青年会議所においてもメンバーのネットワークを活用し、経営に関する知識や仕事内容を享受できるシステムを構築していくことで、少しでも会社に還元できるものを創出していく必要があり、必ずや地域にも還元できるものと確信している。また、地区への出向や地方への遠征に積極的に参加することでの個の成長、LOMの成長にもつなげていきたい。他LOMメンバーとの交流で生まれる見識は間違いなくお金では変えられないものであり、その重要性を伝えていきたい。
そして、函館青年会議所では昨年度、70周年記念事業で函館合同花火大会を成功裏に収め、地域の方々へ広くアピールできたのも事業内容の魅力はもちろんのこと、やはり事業を行うPRが上手くできたことに尽きると感じている。地域の目に多く触れる機会が増えたことでの効果が生まれ、事業内容や函館青年会議所を知っていただけたのは、今や日常では当たり前になっているSNSを効率よく活用できたことが結果につながったのではないか。本年度はSNSを中心に動画を含めた活動をタイムリーに発信していき、共感を得ることで、地域から求められる団体へと変革できる絶好の機会であると考えている。日々新鮮な情報を得ること、与えることを意識した行動に邁進していきたい。
2014年第二次安倍内閣発足後に地方創生が提唱され、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけるという政策が進められたが、これまで抜本的な解決までとはいかず、地方都市においての状況はますます厳しいものになっているのが原状である。また、首都圏ではウィルスの猛威はもちろんのこと、近い将来訪れる可能性が非常に高いとされている首都直下型地震の脅威や近年の台風災害、豪雨災害の脅威など様々な高リスクに日々脅かされている。しかし、2020年は新型コロナウィルス感染症拡大防止により、都市部の大手企業のおよそ8割がテレワークを導入されたといわれ、今や人口密集地域の都市部企業にわざわざ就職による移住をする必要性が薄れ、まさに新時代のフェーズが訪れてきたことが皆様も体感しているのではないか。実際に昨年7月に茶類販売大手のルピシア社がもともと東京都渋谷区代官山に本社があったのをニセコ町に移転した。3年以内にすべての本社機能を移すという方針を掲げ、100人規模の社員が移住するとされていて、社屋や社宅の建設、地域雇用の増加、人口増による税収増など地方にとっては多くのメリットをもたらすことが明確にわかる。決してすべての企業が地方都市に本社機能を移すことは容易ではないが、この新時代では国民のマインドが変化していき、東京一極集中を是正できる絶好のチャンスである。我々が住む函館は全国的に知名度が高く魅力度ランキングでも常に上位に入るくらい注目される都市だが、移住したい街という認識はまだ認知されていないのではないか。函館においても都市圏企業を誘致できるポテンシャルは十分にあり、函館の特性を活かしたモデル構築につなげていきたい。
昨年は、新型コロナウィルスの影響で全国の小中学校をはじめ、高等学校、大学など臨時休校となり、授業の遅れや夏休み冬休みの短縮、各行事の中止や規模縮小など様々な影響が出たとされている。函館市の0歳~18歳までの人口は約3万人程度といわれ、この先も人口数は減少の一途をたどっていく予測がある。平成30年度のデータで函館市における高校生の卒業後の進路結果によると卒業者数が2,485名いて、そのうち進学者数が1,682名でおよそ68%。就職者が594名でおよそ24%になっていて、地域の貴重な若い人材をこの少ない人数で各企業は分け合っている。過去にも函館青年会議所でもこの街に若者が残らない理由として、都市部への憧れや地元に就職先が無いなどの事実を深堀りしてきたが、今後も危機感をもつべき課題である。
私は青年会議所に入会以来様々な函館の魅力を学んできたが、忘れていたことや知らなかったことが多く、地元だから知っているという慢心があった。実は子供の頃の記憶や人から聞いた情報でしか知識がない自分に気が付き、今は家族で定期的に函館の名所を巡って楽しんでいる。そのおかげもあり、今では地方の人に原状の自分が体験した魅力を勧めることができている。メンバーにおいても人から聞く情報はもとより、実際に目で見て体感し、函館の魅力を再認識するところから始めてみよう。また、函館青年会議所メンバーは会社の中枢を担う青年経済人が集っている。地域の若者との関わる機会をさらに創出することで、函館の魅力が直に伝わり、我々の企業の魅力も発信することができ、地元に残るあるいは将来函館に戻ってくるという選択肢を与えられる契機となりえる事業を目指していきたい。
どのような時代でも課題解決のために青年会議所メンバーは地域のためを想い活動を続け歴史を紡いできた。その根源はコロナ渦の時代であっても変わらないものであり、我々は課題解決に向けて日々活動していくものである。
古代の町の中、レンガを積む三人の男に「何をしているのか?」と聞きました。
一人目の男は顔も上げずに「レンガを積んでいる」と答えました。
二人目の男は「食うためにこうしてレンガを積んで働いているのさ」と言いました。
三番目の男は明るく顔を上げてこう答えました。
「後世に残る町の大聖堂を造るためにレンガを積んでいるんだ!」と。
三人の「目的」はレンガを積むことですが三人の「目標」は全て違います。
一人目の人は目標もなくただ積んでいるだけ。二人目の人は「食べるため」です。
三人目の人は「後世に残る仕事をするため」です。
目的意識を明確に定めることが、この街の活性化につながる。諦めることなく逆境に打ち勝つ力で邁進していこう。